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言いまつがっちゃった。

 2008-09-05
女子大生アユミは、
そそっかしいことで知られている。
いまアルバイトしている
洋食屋さんでも、それは
いかんなく発揮される。
いわゆる「聞きまつがい」
「言いまつがい」が
とても多いのだ。
お客さんと会話を
交わす事が多い仕事なので、
とても問題ありなのだが、
その陽気な性格と憎めない顔立ちから
店長さんにかわいがられている。
だから大きなミスをしても
クビになることがないのだ。

ある日のこと、
アユミはいつものように
アルバイトをしていた。
その日はいつになく
お客さんが多く、
目が回るほどの忙しさだった。
次から次へと
入ってくるお客さんを
席へと案内するアユミ。
「おひとりさん、ごあんな〜い」
「おふたりさん、ごあんな〜い」
「続いて、おひとりさ〜ん」
「そのあと、おふたりさ〜ん」

そして次のお客さんが入ってきたとき。
アユミは言ってしまった。
「続いて、おふとりさ〜ん」。
「あっ!」

そのお客さんは、かなり
ふっくらとした男性。
この店のオーナーの弟であった。

その日をもって、
アユミは、アルバイトを
やめる事となった。


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夢見る夢夫君。

 2008-07-11

夢見るスグル君。
人は彼のことを陰でそう呼んでいる。
ルックスは申し分なし、
高学歴で、そこそこの
企業で働いている。なのに35才でいまだ独身。
その理由を彼以外はみんな知っている。
彼は、自分の妻となる人と、
運命的な出会いがあると信じ込んでいる。
だから、お見合い、
人の紹介はいっさい受け付けない。
ドラマチックな瞬間を
今か今かと待ち望む、夢見る夢夫君なのだ。

ある日の午後、昼食を終えたスグル君は、
オフィス街の交差点で信号待ちをしていた。
ふと前を見ると、ロングヘアの女性がそこに
いる。後ろからだとよくわからないのだが、
どうやら携帯でメールを打っているらしい。
なかなか素敵な人だなと、スグル君はつぶやいた。

やがて信号が青になる。事件が起こったのはその時だ。
女性は、携帯をバッグにしまおうとしたのだが、
その意図とは逆に、地面に落下してしまったのだ。
アッと思ったスグル君は、すばやく
そこにかけより携帯を拾った。そして
それを渡そうとしたのだが、顔を上げるともう
彼女の姿はない。信号が変わった瞬間、
猛ダッシュで走り出したのだった。

離れていくその姿を見つけて、スグル君は
あわてて追走した。
しかし、彼女は信じられないほどのスピードで、
なかなか追いつくことができない。
(おいおい、なんでそんなに早いんだよ、元陸上部かよ)
そんなことを思いながら、必死で後を追いかけた。

そして、いつもの妄想癖がはじまったのだった。
(待てよ。これはひょっとすると神様が仕組んだ出会い
 なのかもしれない。彼女こそ運命の人なのでは)

ハーハーと息を切らしながらも、携帯を渡した時の
ことを思い浮かべる。
(「えっ、追いかけてきてくれたんですか、私のために」)
(「人として、当たり前のことですから」)
(「ありがとう!お礼にお茶でも」)
(「いえいえ、お気になさらないでください」)
(「せめて、お名前だけでも」)
(「名乗るようなものでは、ないので」)
(「お願いします、名刺でもかまいませんので、
  いただけませんか」)
(「そこまで、おっしゃるのなら」と名刺を差し出す)
これは、なんとしても追いつかなきゃ。スグル君は、
まさに火事場のなんとか力という勢いで走り続けた。

そして、幸運が訪れた。彼女の先にある
大通りの信号が赤に変わったのだ。
どんどん近づく彼女の姿。
運命の時が間近に迫る。

ハーハー、ゼイゼイ。

「携帯、落としましたよ」。

「えっ、ありがとう」。

その声は、予想とはまったく違う
低音で、
口には
ヒゲをたくわえていた。




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我が家の越後屋。

 2008-06-16
まさる君は家で
金魚を二匹飼っていました。
きっかけは、金魚すくいでした。
金魚すくいの金魚は、すぐに死んじゃうよと
友だちから聞かされていたので、
まさる君はそんなに
長生きしないだろうと思っていました。
ところがところが、とても元気。
病気ひとつしませんでした。

そして、その2匹はとても仲良し、
泳ぐ時もぴったりと寄り添い、
眠る時も、一緒。
そばを離れようとしません。
それが半年ほど前に一匹が病気になって
死んでしまったのです。

金魚に感情があるのかどうかわかりませんが、
まさる君には、残された一匹が
なんとなく寂しそうにみえました。
飼育書によると、金魚は群れて生活するので、
複数で飼う方がよいとされています。
というわけで、まさる君は
もう一匹増やそうと思っていたのですが、
ついつい遊ぶのに夢中。
どんどん日が過ぎていきました。
一匹になると、それはそれで
落ち着いてきたようで、
その子は、ゆったりと生活を
楽しんでいるようでした。

それから半年、やっぱりもう一匹ということで、
まさる君は、近くの金魚屋さんに
新しい金魚を買いにいきました。
新しい金魚は、うちの子よりも、一回りも小さい。
同じ水槽に入れて大丈夫なのかと
少し心配になりました。

えさをちゃんと食べられるのか?
いじめられないだろうか?
そんな不安をかかえながら
水槽に入れてみると、びっくり。
予想とはまったく逆でした。
新しい子は、小さいながらも、
水槽の群れの中で
激しいエサ争奪戦を繰り広げていた戦士、
かたやうちの子は、一匹で悠々自適で
エサをもらっていた金魚。
その戦士は、小さいカラダでうちの子を追いかけ回し、
どんどんエサを奪っていく。
うちの子は逃げる一方で
なかなかエサにありつけないようすでした。
まさる君は、それを見て笑ってしまいました。
どんな世界でも同じなんだね。

その後も、その新しい金魚の
ワルぶりはあいかわらず。
エサのとき、必ずもう一匹を追い回して、
自分だけ食べようとする。
時代劇が好きなまさる君は
新しい金魚に「越後屋」という名前を付けました。

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ある「少年」の物語。

 2008-06-05
まだ年号が昭和だった頃、大阪のある街に
少年Hは住んでいました。
少年H、といっても彼は少年ではありません。
見かけが少年。小柄で、ひとなつっこく
少年のような顔をしていたのです。

当時、彼は大学に入学したばかり。
お酒は二十歳になるまで
飲めないのですが、友達たちは
しょっちゅう飲みに出かけていました。
そんなとき、いつも彼だけが仲間はずれ。
それは、どうみても少年に見えるので、
「身分証明書を見せなさい」と、
お店の人に言われるからです。

そんな少年Hが、晴れて成人を迎えたとき、
友達Tと一緒にディスコへ出かけました。
席につくやいなや、隣にいる女性が
話しかけてきました。
「こんなとこ来たら、あかんやん」
「君、年、いくつなん?」。
少年Hは待ってましたと言う気分だったのでしょう。
20歳だと伝えようとして、
指を二本差し出し、ピースと言ったのです。
すると女性は「ええっ!、12才やの〜?」
友達Tは、もう大笑い。
少年Hは、すっかりふさぎこんでしまいました。

少年H、彼は見かけとともに、心も少年でした。
純粋で正義感が強い。おそれるものを
知らなかったのです。
友達Tがヤンキーたちにからまれた時、
少年Hは助けにいきました。
「おまえら、なにしとんねん、俺が相手したる!」。
ヤンキーたちは、驚きました。
「なんなんだ?この子供」。
まさに、そういう気分だったのでしょう。
最初はまったく相手にしていなかったのですが、
そのうち腹を立て、少年Hをボコボコにして
去っていきました。
「ごめん、怖くて見てるだけやった」と友達のT。
少年Hは、腫れ上がった顔を
おさえながら「誰でも、そうやで」
「でも、無事で良かったな」と微笑んだのでした。

やがて大学を卒業した少年Hは、
とある会社に就職しました。
「お客様のために、がんばんねん」
「喜んでもらえるサラリーマンになるで」。
そうつぶやく彼の横顔は、まだまだ少年でした。

それから、すっかり少年Hは友達たちの前に姿を
現さなくなりました。
おそらく仕事で精一杯だったのでしょう。

時が流れて、少年Hの記憶が消えかけた頃、友達Tは
偶然、街で少年Hと出会いました。
驚いたことに、まだまだ少年の面影が残っている。
「よう久しぶり、変わってへんな」
「ところで仕事の方はどう?」と話しかけました。
すると少年Hは、「もうかってるで〜、世の中、金や、
金のためやったら、俺はなんでもするで」と高笑い。
見かけは少年Hでも、心の中は、すっかりおとなへと
変わっていたのでした。

年を重ねるにつれ、いろんなものを手にする。
しかし、それと引き換えにいろんなものを失っていく。
友達Tは、とてもさみしい気分になりました。


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プロフィール

Author:bruce06
大阪在住のコピーライターです

今から何年も前、遊びで歌詞のようなものを書いていました。
それをブログに載せようと思いましたが、今、読み返してみると、あまりにもヘタ。
そのままそこに載せるのは、
恥ずかしいので、別のブログをつくって、こっそりとそこへ
載せようと思いました。そして
つくったのがこのブログ。
だから、素人の落書きのようなもの、駄文集です。さらっと流し読みしてください。

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